BeAST




ハルは何も知らない。


灯織が、ハルのために頑張ってたこと。


「ひおは、無事なのかな?」


こちらに顔を出した子が、ハッとする。


「へえ、置いてきたんだ。どこかな。そうだなぁ、そこにいる君の、お兄さんのところに置いてきたのかな」



全員が固まる。

そんな中で、僕のスマホが震える。


スピーカーにして通話に出る。


『環、悪い。そっち行ったか?』


「うん、いるよ。」


『そうか、良かった。そいつらに聞こえるようにしてもらっていいか』


「もうしてる」


『さんきゅ。慎矢、皇、環には迷惑かけんなよ。かけたらぶっ殺す。ハルの事はどうとでもしろ。』


「ちょ!灯織!!!今日は会ってくれるんじゃ」


ハルが騒げば、


『会わねえわ、頭沸いてんのか』


いつも通りの返し。


「ねえ、ひお」


『ん?』


「お兄さんと一緒にいるの?」


僕が聞けば、灯織は黙る。


「大丈夫なの?」


『環』


明るい声。

大丈夫なんだと、思いたい。



『……俺、変われなかった』



その言葉だけで、理解する。

全て理解する。



『でも、今は、それでいいって思える』


涙が出る。

自分の無力さに震える。


「そう」


『ごめん。でも俺、環に出会えて良かったし、感謝してるし、変わらず愛してるよ』



< 195 / 337 >

この作品をシェア

pagetop