BeAST
「うん」
両手で顔を覆う。
『ただ、俺が、環みてえな人間になろうとして挫折したってだけ。環や、ハルみたいな人間には、俺なれねえや』
「…うん」
『泣いてんだろ?環』
「泣いて、ないよ」
『俺は環みたいにはなれないけど、幸せより苦しい方が安心する馬鹿だけど、でも、唯一、お前が苦しむのだけは嫌だ』
「……馬鹿だね」
『また連絡する。また、ハルがいねえ時に会いに行くから。』
ハルの方を見れば、僕と同じぐらい泣いてて。
「はぁ?あたしいる時でも、いいじゃん!」
『うわ、お前泣いてんの?きも。』
『辛辣』
灯織じゃない声。
ハルがピクッと反応する。
『いーんだよ、ハルなんか』
「お兄さん、いるんだね?」
『ああ、いるよ、隣に。』
平然とそう答える灯織。
「灯織を、理解してくれる人なんだね」
そう聞けば、周りの3人が目を剥く。
僕の言葉に。
『さすが環だな。』
ふっと笑う灯織。
「……ねえ、ちょっと、待ってよ…」
『うるせえクソ馬鹿。お前は黙って慎矢と皇と話してろ。じゃ、またな、環』
ブツ、と切れた通話。