BeAST
善人か、悪人かで言えば、世間では悪人になるのかもしれない。
「でも、ひおがそばに居るってことは、お兄さんは全部が全部悪じゃない。だから、君たちはここに来たんじゃない?」
ニコッと笑えば、不思議そうな顔をする2人。
なんで、分かるんだって顔。
「ひおが、僕を嫌悪して殴って、蹴って、殺そうとしたように、お兄さんはきっと弟を虐めた。それでも、愛してるから、情けをかける。」
多分、恋人だった方の子が、みるみる目を見開く。
「僕ね、心臓移植しないと、生きられないんだ。殺そうとするぐらい嫌いなのに、僕自身がもう諦めてたのに、ひおは周りの大人を怒鳴りつけた。環は死なない、死なせないって。それからだよ、ひおが普通に人を愛そうとし始めたのは。」
それまでのひおは、同じ人間には思えないほど無慈悲で、近寄った人間全部を拒否する子だった。
「僕にしか、心を開かない。けど、僕のために耀介に頭を下げて、僕の医療費を肩代わりする代わりに、ひおは耀介から仕事を与えられた。君たちがぶつかるのを止めるっていう仕事。耀介からは聞いてる。君たち2人がひおに何をしたのか、全部ね」