BeAST
「『やっぱり、俺は要らねえのかな。大事な人、悲しい顔にさせることしかできねえのかな。愛されて生まれてきた人間と、俺が同じなわけがない』、あいつはそう言ってた。」
ああ、そこで、腑に落ちたのか。
「僕らの普通が、あの子には普通じゃなかったってこと。僕らにとっての優しさが、あの子には優しさじゃない。……君のお兄さんからの優しさが、あの子には本当の優しさなのかもしれない」
「そんなの!」
「ハル。怒るって言ったよね。いくらハルでも、ひおを傷付けるのは許さないよ。ひおへの僕らの普通は、ひおにとって普通じゃない。」
「……そういうことかよ」
泣き声にも似たその声。
「理解できない、分からない、か」
親友くんの方が上を見上げる。
「嫌だよ……なんで、人を傷付けることが優しさになるの……」
虐待を受けていたハルには、理解したくないことだと思う。
「違う。傷付けてもいいっていう、優しさ」
その声に皆、顔を上げる。
部屋に入ってきたのは、紛れもなく、
「ひお」
ひおだった。
「どーせ、分かんないこといつまでも考えて、ハルの馬鹿が話進めねえと思ったから来た。ほら、チーズケーキ買ってきてやったから、そのキモい顔やめろ」
「灯織」