BeAST
「あ、お前ら、名前言ってない?もしかして。」
ギロッと皇を見れば、あ、という顔をして。
「皇漸です」
「あはは、あの男の子の親友くんだよね」
「はあ、まあ」
ぎこちなく答える皇。
「さっきも言ったけど、許す気ないからね」
笑顔で何やらきついことを言い放つ環。
「……はい」
しゅん、とあるはずの無い耳が見えた。
「ほら、チーズケーキ食って元気出せ」
買ってきた紙皿に分けて、皇に渡す。
「んで、もう1人のやつが柿谷慎矢で、あいつの兄貴が柿谷柊吾。結局、ハルとはヤってないってさ」
「うん、だろうね。さすがに成人した普通の男が、弟いじめたさに中学生に手出すとは考えにくいしね」
「俺が16だって言ったら、すげえ落ち込んでた」
「手出せないって?」
「いや、出したことに」
「……うん?」
環には言わなきゃ。
って思ってた。
「環のとこ、来れなかった間に色々あってさ。柊吾に会ったこと。初めて好きな人が出来て、好きな人に初めて好きって言ってもらってさ。でもそれを、間接的に振った。柊吾と色々話して、居場所はここだーって思って、シた」
丞さん。
その人のことを考えるだけで、涙が出そうになるのは何故だろう。