BeAST
灯織は未成年だし、ここにいること自体褒められたことじゃない。
「なあ、兄貴。教えてくれよ」
俺しか、灯織に繋がるこの人に頼めない。
「あいつは、本当に幸せになれないのか」
その問いに、兄貴はため息をつく。
「ここから連れ出すなりなんなりすればいい。でも灯織は、ここに戻ってくる。お前らといて幸せなら、俺のところに来る必要は無いはずだ。お前らの正論は、灯織や俺にとっては武器でしかない。お前らが今、あいつを傷つけてるんだよ。
なんで分かってくれないんだ、
なんで戻ってきてくれないんだ、
お前はそんなやつじゃないだろって。
もうあいつは、全部捨てたんだ。お前らを傷付けてでも自分を守るために逃げたんだよ。それに、あいつはきっと、お前らに謝ったはずだ。」
『ごめんな』
……あいつは、俺にも謝ってた。
「なら、もう許してやれよ。離してやれよ。
環って子は、離してくれたんだろ。
それが全部の答えだろ」
口の中が、乾く。
形だけ、形だけは全て揃うのに。
それなのに、まるでなんの形か分からない。
「分からないものを分かろうとすることはいいことだ。けど、分からないものを分からないって切り捨てることも必要なんだよ、シン」
そう諭す兄貴。
「そうじゃなくても、あの子は普通の家の子じゃない。」
「え」
顔を上げる。
「鳳の人間だ」
「……は?」