BeAST
「何…それ。灯織は、いたずらに人を苦しめて死に追いやった、そのサイコパスと今同居してるってこと?」
与坂が、顔を引きつらせた。
「それで?何であんたらはそこに居たはずなのに、止めなかったわけ?」
柿谷は苦しそうに俯く。
「灯織は、環さんにももう会いに来ないと言ってた。環さんよりも、あいつを選んだんだ。……灯織は、環さんにもう会いにこないでと言われて、笑ってた。解放された顔してたんだ」
皇は、その場にいたんだろう。
顔が思い出すほどに歪んでいく。
「灯織も、あいつも、口を揃えて、理解できないだろうって、分からなくていい、仕方がないって言ってた。」
柿谷は、片手で頭を抱える。
「環さんも、『灯織を理解してくれる人なんだね』って、泣きながらその理解できない繋がりを受け止めてた。」
「俺たちが、灯織を止められなかったことは謝る。けど、灯織が心から笑ってるのに、どうすればいいか、俺たちには分からなかった」
2人の様子を見て、それが嘘だと思う人間は居ない。
「……思えば灯織は、人に大切に思われることに動揺してた。自分を大切にするってことが、理解できない、そんな感じだった。昔もかなり荒れてたみたいだし、隔離されてそこからどう逃げようか考えるくらいには、酷かったんだろう。」