BeAST
「耀介にお前を呼ぶよう指示した」
頼んだって言えよ。
この人はいちいち偉そうで好きじゃない。
偉いんだろうけど。
「……何」
はあ、とまたため息をつく天馬は、俺の格好を見てスマホを取りだしどこかに連絡する。
何件か、連絡をして、
「来い」
そう言って歩き出す。
オーダーメイドのスーツに、高そうな革靴。耀介よりも男らしい顔立ちに合わせた髪型。
高そうなコートに、高そうな手袋。
それを全て着こなし、スマートにおさまってしまう容姿の良さと内から出る仕事出来るやつ感。
胸焼け起こしそうだ。
何故兄弟でこうも違うのか。
天馬は、耀介の兄貴。
時々孤児院に顔を出しては、何故か子供と遊んで帰っていく。
常に偉そうなこいつは、子供との勝負も手を抜かない大人気なさをいつも露呈していた。
まあ、不思議と子供には人気だった。
けれど、俺が孤児院に入って数年で、仕事が忙しいと、顔を出さなくなった。
着いてくれば、ピカピカと新車のように光る高級車。
柊吾も高級車だけど、性格を表すように大人しめの車だった。
車、詳しくないけど、多分、天馬はかなり手を入れてる。
慣れた立ち振る舞いで俺を助手席に座らせる。