BeAST
「忙しいんじゃねーのかよ」
「ああ、忙しい」
即答するのも、こいつの苦手なところだ。
無駄なものを嫌う。
俺は結婚に夢も何も無いが、こいつがこれだけのスペックを揃えているのにも関わらず独身なのは頷ける。
「どこ行くんだよ」
「着けば分かることを聞くな」
会話にならない。
着いたのは、何の変哲もないカフェ。
まあ、穴場チックではある。
どこに行っても、すれ違う人間、近くにいる人間は天馬を見る。
「俺はアメリカン、お前は」
「同じでいい」
即決のこいつには、合わせた方が面倒くさくない。
……のはずなのに、なかなか話始めない天馬。
用がある時はすぐに話すはずなのに。
「…本当に何。あんたが黙る時間とか、逆に怖い」
「お前は俺をなんだと思ってる」
「いいから、早く要件話せよ。」
俺がこの人を急かす日が来るとは。
「要件はいくつかある。」
真剣な目に変わる。
こちらが目を逸らせないような、射るような目。
「まず1つは、環のドナーについて」
ドクンッと心臓が強く音を立てる。
「もう1つは、お前の過去について」
ドクドクと、心音が早くなっていく。
「最後が、これからのお前について、だ」