BeAST
「……好きになるのは、罪じゃないだろ」
目を瞑り、表情を変えない灯織さんの言葉に、また切なそうな顔をする真壁さん。
「それがね、手出しちゃったのよ〜。
先生、旦那にDV受けててさぁ。丞少年助けたくなっちゃって、色々頑張ったんだけど、所詮子供だから何も出来なくてさ。
出来たことは、
……先生のこと苦しめることぐらい」
灯織さんがゆっくり、目を開ける。
何も言わず、じっと真壁さんを見る。
「旦那、ヒートアップして、
先生、殺されちゃった」
持っていた道具を落としてしまう。
その事実と、その事実をサラッと軽い調子で話しきる真壁さんに、驚いた。
「愛したつもりが、苦しめてて、俺から離れようとしたその人をずっと離さずに守った気になってたら、握ってた手はいつの間にか無くて」
真壁さんが跪いて、灯織さんの手を取る。
「……俺、怖かったんだ」
灯織さんの手を自分の頬に当てて目を閉じる。
「離さなければ、灯織も消えてしまうんじゃないかって」
声が少し低くなる。
「俺がそばにいたら、灯織をもっと苦しめるって」
灯織さんの肩に、少し力が入った気がした。