BeAST
灯織side
「でも今、俺は」
丞さんの目が開かれて、鋭く、熱い視線が俺に注がれる。
「君のそばにいられないことの方が怖い。
君のそばにいない方がいいと思った。
けど、今、堪らなく怖い。」
分かってた。
俺のためにいつも通りを演じてくれていた。
微かに震える丞さんの手。
「俺がそばにいないのに、消えそうになっている君を黙って見ていることなんてできない」
自分の神経が、全て丞さんに握られたその手に集中しているような感覚。
「俺のことは気にしなくてもいい。ただ、拒絶しないで欲しい」
懇願するように俺を見上げる丞さん。
そんなの、
そんなの……
「俺は一応大人だから、ちょっとやそっとじゃ傷つかないよ?君の現状や未来、過去がどれだけ悲惨でも、それでも俺はそばにいる。そう覚悟した。
俺は俺の人生を歩む。
君のそばにいる、その人生を選ぶ。」
修復できない傷を、塞いでいく。
どれだけすり抜けようと、とめどなく塞ごうとする。
丞さんの過去が、自分の過去とリンクする。
この人の言葉は、本物だ。
「……プロポーズかよ」
鼻で笑って、丞さんと逆方向に顔を向けて、空いている方の手の甲で顔を隠す。
少しして、丞さんの口角が上がるのを感じる。
「そう受け取ってもらって、構わないよ」