BeAST



嫌だ。

俺は、俺は、


「嫌いにならないよ。どんな灯織も。全部受け止める。……前に、『丞さんのことを1番に大切にして、幸せにしてくれるような人じゃなきゃ俺が許せない。』って葉賀に話してたでしょ。


俺は灯織のそばにいることが幸せ。これ以上ないってぐらい、灯織といる事が楽しくて、この時間がずっと続けばいいと心から思う。」


丞さんは立ち上がって、俺の顔を隠す腕も掴み、俺の顔を見下ろす。



「ねえ灯織。」



俺といたって、幸せにはなれない。

俺はそんな、愛される人間じゃない。


愛されていい人間じゃない。



「灯織を、俺にちょうだい」



それなのに、なんで、なんでこの人は、



俺を宝物みたいに扱うんだ。



ボロボロと情けなく泣きじゃくる。

ああ、ベースメイク、してもらったばっかりなのに。


「抱きしめても、いいですか」


分かんねえ。


分かんねえよ。



「なーんてね。」


その言葉に顔を上げる。


「嫌って言ってもするけど」


ふわっと俺を抱きしめる丞さん。


「俺、灯織が欲しいよ」


目を瞑れば、チカチカとまぶたの裏が光る。


ドクドクと心臓が早まっていく。

俺だって…、俺だって、丞さんが欲しい。



< 240 / 337 >

この作品をシェア

pagetop