BeAST
「耀介の野郎…」
眉間に皺を寄せて、仁王立ちになる灯織。
「俺の理想通りだな。あと、その女らしさのなささえ消えれば」
「んなのてめえに言われなくても、ちゃんと女らしくしてやるよ。」
機嫌が直っただけでなく、前向きに。
ほう。
「それほどまでに惚れているとはな」
顎に手を当てて、首を傾げれば、灯織の首から上が真っ赤になる。
「はっ、あ?」
灯織の驚いた声に、後ろでタブレットを触るその男がこちらに顔を向ける。
バチ、と目が合って、俺がじっと見つめれば、目を瞬かせてから、少し考えこちらに歩いてくる。
「挨拶が遅れてしまい、申し訳御座いません。真壁丞と申します。耀介とは高校の同級生でして、文化祭の際に1度天馬さんにご挨拶させていただいことも」
「覚えている。かなり、雰囲気が変わったようだが」
表情が変わらない。
その顔は、あの頃の真壁丞と何ら変わらないようにも見える。
「覚えていてくださったんですね。嬉しいです」
ふっと柔らかくなる表情。
まあ、あれから10年近くになる。
変わっていてもおかしくはないが。
「あの後、耀介と共に生徒会をしていたと聞いていた。まさか、美容師になるとはな」
「ええ。美を追求するという分野においては、家業と遠からず。この仕事をしながら、家業の方もこなしております。」