BeAST




「運転お疲れ様でした。…灯織も準備お疲れ様」


歩いて近寄り、兄貴に頭を軽く下げ、灯織に目線を移す。



灯織は俺を無表情で見て、後ろの純菜に目線を移す。



「ああ、この子は父さんの妹の菜摘おばさんの娘の純菜。」


「純菜と申します。初めまして」


純菜は動揺しつつも、軽く頭を下げてふわりと笑う。


灯織は、少し眉をピクリと動かして、


「初めまして、灯織と申します。宜しくお願い致します。」



ニコッと笑って頭を下げる。

声は、地声ではなく高め。



さすがに余所行きの自分を演じるのね。


「こちらこそよろしく。ごめんなさい、あなたの美しさに驚いてしまって、言葉が出てこないわ」


純菜は鳳家《うち》の孫たちの中でもまともな方だ。

一般の女の子と何ら変わりなく見えるが、頭が良く判断力に長けてる。

そして、冷静。


「そんなふうにお褒めいただけて嬉しいです。純菜さんも凄くお綺麗で、ずっと眺めていたい」


一瞬熱い目を向けて、ニッと口角を上げる灯織。


その表情を純菜は目を奪われるように見つめ、少し顔を赤くした。

灯織の顔の中性さが男女共に引きつける。



「こら、女の子口説かないの」



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