BeAST




灯織は俺に視線を移し、はあ、と息を吐いて兄貴から腕を離し、俺に近寄る。


そして、クンッとネクタイを引っ張り、耳元で



「それよりも、お前俺に言うことあんだろ」


あ?と喧嘩腰な言葉を吐く。

耳元から顔を離し、引っ張ったネクタイを綺麗に直す灯織。



「先に言っておくけど、耀介は違うからな」


「え…?違う?」


「忘れんなよ」



何が、違うんだろう。

そう戸惑っているうちに、灯織は兄貴の腕を掴み、歩き出す。

俺もそれに着いていくように純菜をエスコートする。


「…耀介と話している感じが、素なの?」


コソッと俺に聞く純菜。

苦笑いして頷く。


「灯織は人見知りが激しいんだ。」


会食場の扉が開けば、視線が一瞬で兄貴と灯織に集まる。


灯織は柔らかく笑い、しなやかに頭を下げる。

そして、兄貴に連れられていつもの席に歩く。

ウチは、席がいつも決まっている。

俺ら、鳳彰仁一家はじいちゃんの席に1番近い席。


俺は純菜を菜摘さんと正人さんの所へ送る。


「とても綺麗ね、灯織さん」


嬉しそうに笑う菜摘さん。


「ありがとうございます。かなり緊張しているようで」



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