BeAST
「そうなのか。全く感じさせない振る舞いだな」
そんな話をしていれば、灯織がこちらに気が付き、少し目を見開き、兄貴に一言告げてこちらに歩いてくる。
「菜摘さん、正人さん」
2人の名前を呼び、座っているふたりより視線を低くするために、しゃがみこむ灯織。
その行動に、
「あら、そんな」
菜摘さんが少し焦る。
周りも何事だと少しザワつく。
「以前お声掛けしていただいた時、失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした」
菜摘さんと正人さんに、灯織に会ったことは聞いていた。
2人は灯織が記憶が無いことも告げていて、それが仕方の無いことだとも分かってくれている。
「いいのよ、気にしないで?」
「そうだ、ほら、立って」
正人さんが立ち上がり、しゃがみ、灯織の手を取る。
申し訳なさそうに灯織は立ち上がる。
「おお、身長高いな」
正人さんの身長をかるく超える灯織。
「ヒールのせいで181あります…」
「ふふ、紅璃も結構身長高かったし、遺伝ね?」
周りなんてものともせずにその名前を出す菜摘さん。
正人さん一家は継母に好意的だった。
「じゃあ、私、結構母の血濃いのかもしれませんね」
眉を八の字にして、クス、と笑う灯織。