BeAST
灯織もまた、紅璃という名が出た時の周りの反応に少し牙をチラつかせた。
灯織は、母親が心の底から好きだから、この場はいつもの灯織よりも短気にさせる場だろう。
「そうね、紅璃に似てとても綺麗だわ、灯織」
その言葉に心底嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「耀介くんから、緊張していると聞いたけれど、耀介くんと天馬くんがそばに居るなら何にも恐れることはない」
正人さんがこれまたありがたいことを言ってくれる。
灯織は、ゆっくりと俺を見る。
「そうですね。分からないことばかりでご迷惑おかけするかもしれませんが、何卒宜しくお願い致します。」
すぐにその視線は菜摘さんと正人さんに注がれ、しなやかに頭を下げる灯織。
「こちらこそ、よろしく。また灯織に会えて嬉しいわ」
「ここの料理はどれも絶品だ。楽しんでいくといい」
優しい2人に、しっかり挨拶をして兄貴の元へ歩く。
「天馬とお前を知ってる人達は、お前らの評価、皆高くて変な感じだな。」
ボソリと俺たちの間の席に着くなり呟く灯織。
まあそれなりに仕事はこなしてきたし、上の人たちからしたら俺らはまだ若い分類だしな。