BeAST
少しの間押し黙る耀介。
やっと口を開けば
「ごめん、灯織。ありがとう」
若干震えた声でそう言った。
俺は耀介を横目で見て頬をつまんでやる。
「礼言わなきゃいけないのは俺なんだよ」
強めに言えば、キョトンとしてすぐに、ははっと笑う。
「言葉と態度が比例してないのはなんで?」
「これ終わったら今日お前ん家泊まる。いいな」
面白そうにクスクス笑う耀介。
耀介は話したいことをずっと我慢してたんだ。
きっと、時々俺を遠い目で見るのは、それが理由なんだろう。
なら、少しでも早く吐き出させてやりたい。
「耀介を甘やかすな」
隣の男が唸る。
「拗ねんなよ」
凄い眼光で俺を睨む天馬。
少しずつ分かってきた気がする。
「今度天馬ん家にも泊まり行くわ」
「来るな」
2人にとって、俺は例外と言うやつなのかもしれないと。
だから、周りの評価との違和感が俺にはある。
「2人がいれば、恐くない、か」
俺が呟けば、2人とも俺を見る。
正人さんのあの言葉は本物だった。
緊張が和らいだ。
けれどこの2人が、特別強い人間だとは俺はまだ思えない。
だから、俺も早く。