BeAST
首を傾げて、ニッと笑えば頭を天馬に殴られる。
「いった」
「調子に乗るな」
「いいだろ。乗ったって。私の記憶の中じゃ、家族なんて居なかったんだ。」
その言葉に全員黙る。
「似てる、とか、血、とか。繋がりのある人達が周りにいるって知って、柄にもなく嬉しいんだよ。」
小っ恥ずかしくて、目線を下げる。
「じいちゃんとか、お父さんとか兄貴とか?これから甘やかしてもらわなきゃ、割に合わねえだろ。」
そう言って、父親を見れば、我慢しかねたようにふっと笑った。
その顔が、仕草が、耀介そっくりで思わず口角が上がる。
「そうだね、灯織。……おかえり」
けれどその一言で、私の心は崩れていく。
耳が、なんの音も拾わず、無音になる。
そして、ひとりでに涙が溢れる。
今までで、1番温かく感じた。
ああ、この人が、
俺のお父さんなんだ。
泣いちまったけど、強くなるって決めたから。
笑え。
「はは……ただいま。お父さん」
そう笑えば、微かにお父さんの体が震えた。
じいちゃんも、少し視線を下げる。
待ってくれていたのだと、分かる。
両脇のふたりは、完全に俯いている。
「私はじいちゃんもお父さんも兄貴達も、許すから。もう私のことで自分を責めないで?お母さんのことは、私も考えるから。」