BeAST
俺の役目は、この人たちを受け入れることだ。
すすり泣く声は、周りだけじゃなく、この会場にいる人間の中にもちらほらいて。
それがお母さんの味方だった人なのか、味方じゃなかったのにそれを悔いている人なのかは知らないが。
「灯織」
お父さんがこちらに寄ってきて、俺を抱き締めた。
今の俺より少し高い身長。
お母さんも高かったらしいから、完全に2人の遺伝だ。
ゆっくり、俺も抱きしめ返す。
「苦しかったし、辛かったし、目の前がずっと真っ暗だった。生きてていいって誰かに言って欲しかった。」
ぎゅう、と強まる腕の力。
「俺、口は悪いし、あんまり素行も良くないし。取り繕うことは出来ても、この先迷惑かけるかも知んねえよ」
お父さんにしか聞こえないから、素の自分で話す。
「それでもいい?」
ふふ、と笑えば
「いいよ」
優しい声。
「俺は、灯織に生きていて欲しい。笑っていて欲しい。幸せになって欲しい。俺も紅璃も君が生まれてきた時から、ずっとそう思っているよ」
1番、欲しかった言葉。
我慢の限界だった。
泣いた。
今までで1番、子供のように泣いた。
「灯織は、これまでもこれからも俺の子供だ。だから、俺が死ぬまで、迷惑かけてもいいんだよ。……今まで苦しい思いをさせて、本当にすまなかった」