BeAST



俺が泣き止んでから、この鳳家の食事会は始まり、場が和んできたところで俺は席を立った。


御手洗で自分の顔を確認する。


思ったより酷くない。

丞さん、ウォータープルーフ使ってくれたのか。


「あ、いたいた」


その声の先を見れば


「純菜さん」


「これ、もし良かったら使って?……って言おうと思ったんだけれど、大丈夫そうね?」


差し出されたのは、デカいケース。

使って、ということは、化粧品?

そのサイズ、丞さんも使ってたけど……


「ありがとうございます。パウダーだけお借りしてもいいです?」


その重そうなものをわざわざ持ってきてくれたのだ。


お言葉に甘えて使わせていただく。


「すみません、お気を遣わせてしまって」


「いいのよ。それに、鳳の食事会で無闇に1人にならない方がいいのよ?」


「えっ」


どういうこと?


「ちょっと拗れた人間が多いの。さっきのお爺様の言葉で今日の今日手を出す人間は居ないだろうけど、あなたの立ち位置を妬む人間はゼロじゃない」



ああ、そうか。

そういう事ね。



ここで、心配無用ですとは言えない。

金持ちの考えていることはよく分かんねえって痛感してる。



「本当に助かりました」


化粧品を返して笑えば


「私には無理して笑わなくていいわよ?というより、あなたと仲良くなってみたいの、あたし」


真剣な目で俺を見る純菜さん。


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