BeAST
「あは、表情変わんねえ〜すげえ」
微笑をし続ける俺。
俺、こいつ苦手だわ。
素が出そう。
「大和は、親父の弟の千隼(ちはや)さんの長男」
「へえ」
口角を上げたまま、耀介の説明に返事をする。
空いている片手で、俺の手を離さないその腕を引き剥がそうとするが、相手も薄ら笑いを浮かべて話そうとしない。
これ、俺の様子見てんなぁ。
俺はため息をついて脱力する。
「離して頂けます?」
そんなに見てえなら、隠し通してやるよ。
「え〜こんな美人の手離したくないなぁ」
「美人だなんて光栄です。でも、離して頂かないと困ります。」
眉を八の字にして首を傾げれば、
「困ってる顔も綺麗だね〜」
ダメだ。
俺は自分の短気さを舐めていたらしい。
ぶん殴りてえ。
「大和なら別にいいよ」
俺の脳内を読んだかのように耀介が言う。
「千隼さぁん」
俺は父親の名前を呼ぶ。
すると、コツコツと革靴の音が近付いてくる。
大和はと言うと、余裕そうな笑顔が歪んでいる。
俺はキョトンとして見せ、首を傾げ微笑む。
「お呼びかな」
その声にそちらを見て大和から離れる。
簡単に離れた。
「初めまして、灯織と申します。今大和さんにご挨拶をさせて頂きまして、是非千隼さんにもご挨拶をと。お名前お呼びしてしまって申し訳ありません」