BeAST




「いいや、大和が失礼をしているのを遠目で見ていた。私の方こそ、愚息の躾がなっておらず申し訳ない」


ニコッと笑うその人は目が笑っていない。

長男彰仁、次男千隼。

性格逆なのか。

お父さんは優しそうな感じで、それでいて芯がしっかりしている感じ。


千隼さんは、かなり漢!って感じなんだな。

これまたイケおじだ。



「いえいえとんでもございません。素敵な息子さんですね。」


こんな表面的な褒め言葉は、嫌味に聞こえるだろうが。

つか、嫌味だけど。


「ですが、私はかなり粗悪な環境で育ちまして、大和さんに悪い影響が出てしまったらと心配になってしまって、千隼さんをお呼びさせていただいた所存です。」


怪我しても知らねえぞってこと。

怪我っていうのは物理的な話だけじゃない。

俺喧嘩出来ないし。


「確か、施設を転々として去年まで鳳の孤児院に居たとか」


「はい。そのとおりでございます。」


「それにしては、しっかりしているね」


「ありがとうございます。兄たちの真似をするのに必死です。」


眉を八の字にして笑えば、千隼さんは俺をじっと見つめる。


「本当に両親を憎んでないのか」


なんてこと聞くんだい。


< 280 / 337 >

この作品をシェア

pagetop