BeAST
「いいや、大和が失礼をしているのを遠目で見ていた。私の方こそ、愚息の躾がなっておらず申し訳ない」
ニコッと笑うその人は目が笑っていない。
長男彰仁、次男千隼。
性格逆なのか。
お父さんは優しそうな感じで、それでいて芯がしっかりしている感じ。
千隼さんは、かなり漢!って感じなんだな。
これまたイケおじだ。
「いえいえとんでもございません。素敵な息子さんですね。」
こんな表面的な褒め言葉は、嫌味に聞こえるだろうが。
つか、嫌味だけど。
「ですが、私はかなり粗悪な環境で育ちまして、大和さんに悪い影響が出てしまったらと心配になってしまって、千隼さんをお呼びさせていただいた所存です。」
怪我しても知らねえぞってこと。
怪我っていうのは物理的な話だけじゃない。
俺喧嘩出来ないし。
「確か、施設を転々として去年まで鳳の孤児院に居たとか」
「はい。そのとおりでございます。」
「それにしては、しっかりしているね」
「ありがとうございます。兄たちの真似をするのに必死です。」
眉を八の字にして笑えば、千隼さんは俺をじっと見つめる。
「本当に両親を憎んでないのか」
なんてこと聞くんだい。