BeAST



「そうでもないよ。ここに来る前、天馬と大喧嘩したし」


「大喧嘩?」


お父さんが首を傾げる。


ドレスの袖をススッと捲りあげ、包帯姿を見せる。


「テーブルにある皿全部割っちゃった」


目を瞬かせて、すぐ腹から声を出して笑うじいちゃん。


「何故割ったの?」


お父さんの聞き方が、本当に耀介みたい。


「発作みたいな?一定のレベルを超えた精神的ストレスを与えられると暴れたり、吐いたり、意識失ったりするんだよ。色々対策はとってるんだけどね。」


お父さんの目が鋭くなる。

それは俺に向けたものではなく、自分への。


「俺がお母さんの記憶、自分の都合のいいように変換してたって事、天馬から話聞いて知ってさ。自分が許せなくて、物に当たっちゃったんだ。」


情けない。

自分をコントロールしきれない。


「最近はかなりコントロール出来てたんだけど、お母さんのことになると、どうも自分が情けなくて仕方なくてさ。」


何かを言おうとする周りに、俺は手を上げる。


「自分を責める必要ないとか、言わなくていいからね。皆だって、自分を責めてる。似たもの同士でしょ?」


眉を八の字にして、クス、と笑えば、皆押し黙る。


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