BeAST
「そう……丞さんは今にも俺を殺しそうだけど」
「丞さんとは付き合ってんの?どういう事?」
風見がコソコソと灯織に聞く。
「丞さんとも付き合ってないよ。俺が卒業するまで待ってもらうつもり。」
「…卒業?」
ごくごくとジンジャーエールを飲み干した灯織。
「薫さん、ごちそーさま。お代はオーナーに。……俺、まだ高校生だから」
ニコッと楽しげに笑って俺の肩をポンポンと叩き、立ち上がる灯織。
フードを被り直し、丞さんの元へ歩いていく。
「あ、柊吾。お礼と言っちゃなんだけど、家にプレゼント置いといた。楽しみにしとけー」
するり、と慣れたように丞さんの腕に自分の腕を絡め、
「ホント、ありがとう。じゃな」
幸せに笑う灯織に、何も言えない。
言えずに、手を振る。
あ、鍵……
「あ、そう言えば合鍵って」
「胸ポケット」
風見の言葉に返答する市東さん。
「かなり手馴れてんな、灯織ちゃん。スリ師?」
胸ポケットから鍵を取る。
「自分の身を守るために覚えたらしい」
「粗悪な環境、か」
「高校生って……柊吾さん、高校生に手出したんすか」
「お前今黙ってろ」
風見に呆れたように溜息をつく市東さん。