BeAST





「……っ」


灯織の腕の力が強まった。


「……悪かった、本当に。2人がいいなら、友達でいたい」


その言葉に震えた。

きっと、幸大も。


バッ、と灯織の腕を払ったのは幸大。



キッ、と灯織を睨んで、



「許さねえよ馬鹿か!!!」


そんな、涙でぐちゃぐちゃな顔で言われてもな。


でも、灯織には効くようで、無表情が少し崩れる。


「今後、勝手に消えるなんてことしてみろ!?今度はお前の都合なんて考えねえで探すからな!?」


今度、ね。


「…ん」


申し訳なさそうに、それでいて嬉しそうに笑う灯織。


次の瞬間、フワッと女物の香水の香りが鼻を掠めた。


灯織に抱きついたのは、与坂だった。


「何してんの」


そう言ったのは与坂。


「学校来た」


与坂を優しい顔で見下ろす灯織。


「もう来ないかと思った」


微かに、その声が震えていることに気がついた。


「もう、会えないかと思った」


ゆるりと与坂の頭を撫でる灯織。


「もう……居なくなんないで」


その言葉に目を閉じる灯織。


静かに与坂を抱きしめる。

絵になるな。



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