BeAST
「分かった」
まるで、恋人みたいに見える。
「香水、一緒なんだね」
涙目で与坂が灯織を見上げて笑う。
「くれた人に、俺が卒業するまで待っててもらうことにした」
香水をくれた人、つまり灯織は好きな人と想いが通じて、その好きな人は社会人だから待ってもらうってことだろう。
「その人、本当に優しい人なのね」
「……ん、すげえ優しい人。俺にはもったいないくらい」
「じゃあ、待ってくれてる間に他の人に取られちゃうかもね」
「それならそれで仕方ねえよ。あの人にとってそれが幸せなら。」
そう話す灯織の顔は凄く綺麗で、俺たちまで顔が熱くなる。
「強くなったね、灯織」
その声は、
「犀川」
「その人のおかげなんだね」
少し切なそうな犀川。
「……皆に許してもらおうなんて思わねえ。俺は高校なんて通うつもり無かったし、友達なんて作るつもりもなかった。用が済めば、辞めるつもりだった」
柿谷が言っていた通り。
「けど、こうやって皆と顔合わせたら、ダメだな」
眉間に皺を寄せ、目を閉じる灯織。
何も話せなくなる灯織を見て、俺らは目を合わせる。
皆も涙を我慢してて、思わず笑う。
「言えよ、俺らのこと大好きなんだろ〜灯織〜」
「……うぜえ、幸大、埋めるぞ」