BeAST




教室に向かうまでは、さすがに声をかける人は居なかったが、灯織は注目の的だった。


極めつけは、教室にいる2人。


席に座る皇とその隣の机に軽く腰をかける柿谷。

今までの出来事を見てきたクラスメイトからすれば、目を見張る状況。


柿谷がこちらに近寄ってきて、片手を上げるだけで周りがびくつく。



「そんなに髪伸びてたのか」


灯織の髪に優しく触れる。


「ん」


軽く答える灯織。


柿谷は、少し黙って、


「おかえり」


そう一言呟いた。


すると、灯織は


「怒ってもいいんだぞ」


何を考えている表情なのかは分からない。

けど雰囲気が優しい。


「自分勝手だって」


柿谷は眉間に皺を寄せる。

その顔を見て、灯織は微かに笑った気がした。


「嘘、冗談。」


柿谷の頭をポンポンと撫でる。


「ハルに染まってたらどうしようかと思った。俺、あの女、大っ嫌いだから」


柿谷は灯織を見つめる。


「お前は、可愛いね。ただいま」


「俺は」


すかさずそう呟いたのは皇だった。


「あ?お前のどこが可愛いんだよ。」


はあ、とため息をついて自分の席に歩く。


「今日は来たんだな」


2人もこちらに来て、柿谷が言う。


< 296 / 337 >

この作品をシェア

pagetop