BeAST




鳳に入ることを決めて、家もセキュリティの良い場所に指定された。


とりあえず手を洗い、コップを出して買ってきた飲み物を出す。


「好きなとこ座って。上着とか掛けるから貸して。」


「手伝う」


礼がそう言ってくれるが、


「礼はダメ。ハンガーとか、衣装部屋だし」


そう話せば、礼が途中まで出した手を引っ込める。

その様子に笑ってしまう。


「ありがとう、礼」


感謝しかねえな。


「与坂、犀川、手伝って?」


そう言って2人を衣装部屋に招く。


中に入るなり、2人とも固まる。

そこには、何着ものドレスや、女性物の服。


「上着、貸して」


香りの強くないクローゼットに上着を入れる。


「これ……」


「すげえよな。いくらすんだろ」


「彼女さんの…?」


与坂と犀川が恐る恐る俺を見る。


「んーん。俺の」


固まるふたりに頭を下げる。


「ごめん、俺、女なんだ」


息を飲む音が微かに聞こえる。


顔を上げて


「軽くは聞いてると思うけど、翔凰に入ったのは慎矢と漸の監視っつーか、ぶつかるのを阻止するためでさ、そのために男装して通ってた。まあ、それまでも自分守るために男っぽく振舞ってたから、これが素ではある。」


出来るだけ、ゆっくり話す。




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