BeAST



その名前を聞いて、与坂が目を丸くする。


「真壁丞って、あの真壁麟太郎の長男!?」


かなり大きい声に、ガラッと扉が開く。


「おい、お前ら遅…い」


幸大だった。必死に礼が止めた様子だけど。


「何だこの部屋」


話が進みそうになかったから、とりあえずリビングに戻り、俺が女であることを言えば、幸大は驚いていたけど、そうだったのかー!とそれだけ。


「丞さんってそんなに有名なんだ」


「美容師目指してる人なら、知ってるよ。というか、ファッション誌の表紙とかヘアメイクしてたりする凄い美容師さんだよ。ほら、イケメンだし尚更」


「へえ」


ソファの肘掛に肘を着いて頬杖をつけば、


「あー、妬いてる〜」


俺の隣に座り、抱き着いてくる与坂。


「丞さんのことはひとまず置いといて、これまであったこととりあえず聞いて欲しい」


与坂の頭を撫でて、皆の顔を見る。


俺が孤児院にいた理由。

翔凰に通うことになった経緯。


「俺はハルと慎矢と漸の件を解決して、しばらくの間慎矢の兄貴の家にいた」


「……サイコパスって思ってたけど、灯織から聞くとなんか」


「いいよ。俺と慎矢の兄貴は普通になりたくてもなれなかった。非難されていい人間。」


< 304 / 337 >

この作品をシェア

pagetop