BeAST
またひとつ
「ひお」
目を覚ませば、少し薬品の香りがして、視界は1面真っ白。
顔を上げて、髪をかきあげる。
「そろそろ面会時間終わるよ。明日から学校でしょ?」
「…もうそんな時間か」
「忙しいんだから、通いつめなくてもいいのに」
前より顔色も良いな。
頬に手を添えて、指で撫でる。
「いや、毎回寝てばっかで悪い」
「僕はいいんだよ。ひおの寝顔なんていくらでも見ていたいから」
前まではそんな言葉が優しく聞こえていた。
今では熱を帯びた言葉に聞こえて、手をするりと離す。
俺が鳳に入ると決めてからすぐ、環の元へ来た。
少し前に手術をして成功した。
環の寿命が延びた。
嬉しくて泣きじゃくった。
大好きで愛してる、俺の家族。
「身体、慣れてきたらうちの高校来いよ」
「んー、どうしようかなぁ」
俺の愛と、環の愛の形が違うことぐらい分かってるよ。
その事も、俺の思いも、間違いも全て話して、当たり前のように受け止めてくれた環。
手放したくないけど、手を離すべきだとも理解してるつもりだ。
「じゃ、またな。帰るわ」
環と居る時間は決めている。
そうでなきゃ、俺は自分の願望を押し付けているだけな気がして。