BeAST




なんて言って、コーヒーの準備までしてくれているらしい。

香りで分かる。


タオルで顔を拭いて、ヘアバンドを付ける。


「言っとくけど、俺以外にこんな仕事受けるなよ。笑えねえ」


こんなワガママ、聞いて欲しいわけじゃない。

聞くか否かは丞さん次第。

前から縛りたくない気持ちは通じてだ。


だから、ただ俺の願望を口にしているだけ。


「受けないよ」


鏡越しに笑う彼が、そんなに嬉しそうな顔をするなら、誰も損じゃないだろうしな。


「そ。」


ヘアバンドをしたままキッチンに向かう。


「丞さん、飯食った?」


「うん、一応ね。ただ俺が灯織の寝顔見たいなぁって思ったから早く来ただけ。俺のことは気にせず朝ご飯食べていいよ。30分後ぐらいには準備しなきゃだけど」



「よゆー。待ってて」


「はーい」



寝顔見たい、ってなぁ。

別にいいけど。


朝飯を食べ終わって、メイクやら髪やらやって貰って、届いたばかりの女子制服に着替える。


スカートは、何気に短い。

いや、もっと普通長いはず……


姿見の前でクルクル回っていれば


「天馬さん、短く作らせたのかもね」


「うわ、怖」


あの面で、女子高生はスカート短い方がいいとか思ってんのか?



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