BeAST



そこには、細めのピンクゴールドのブレスレットが付けられていた。


手際良すぎ。流石。器用すぎ。

早くて分かんなかったわ。


「これ、学校とか外では、付けててくれる?」


いきなりのプレゼント。


「灯織はさ、俺を縛りたくないって思ってくれてるでしょ?俺も縛りたくない。けど、ごめんな?」


優しい口調から、少し、俺が男装していた頃のような話し方に変わる。


「余裕ないんだ」


指輪、ネックレス、ブレスレット。

恋人からのプレゼントにおいて、それらは束縛を意味すると聞いたことがある。


「《手錠》だっけか」


「ん。こんなオッサンが、って引いた?」


眉を八の字にして申し訳なさそうに笑う。


「いいや、本物の手錠でも喜んで着けるけど?」


ジッと丞さんを見つめれば、笑みが一瞬消えて、ふふ、とまた笑う。


「この期に及んでまだ煽るー?」


「俺、今んとこ丞さんにもらってばっかだよ。香水も、ブレスレットも、告白の返事だって待ってもらってる。俺が丞さんの隣に胸張って立てるようになった時、俺なんかで良ければ全部あげるから」


真剣に笑わずに丞さんを見つめる。


「丞さんが不安に思うことなんてひとつも無いよ。俺には今言葉とか行動で見せるしか出来ないから、不安になったらすぐ言って?丞さんが俺を好きでいてくれるうちは、離すつもりないよ」


丞さんの眉間にシワが寄る。



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