BeAST
いや、はたから見たら全然合ってねえんだろうけど。
丞さんとマンションから出れば、高級車の前で頭を下げる男の人。
「灯織様、お待ちしておりました。」
忘れてた。学校までの送り迎えが着いたんだった。
「本日からお世話になります、遊佐(ゆさ)と申します」
「おはようございます、灯織です。よろしくお願いします」
ニコッと笑って頭を下げる。
後部座席の扉を開けてもらい、俺は丞さんに手を振って乗り込む。
「遊佐さんは、天馬からの指示ですか?」
マンションの敷地から出て、俺が聞けば、ピクッと肩を揺らす遊佐さん。
「ええ、天馬様から灯織様の送迎をするよう命を受けまして」
ああ、天馬って呼び捨てにする人間が少ないからか。
「そうですか。私、本当に庶民以下の環境で育ってきたので、遊佐さんにはご迷惑おかけしてしまうかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。それと、私の送迎の時はあまり力まずに」
少し、固く見えるのは俺だけか。
「恐れ入ります。少し噂で、一京様に似ておられると聞いておりましたので、その緊張が伝わってしまったのかもしれません。申し訳ございません」
それを聞いて吹き出す。
「あははっ、それは緊張しますよね。あのじいちゃんに似てる女とか、なかなか居そうにないですもんね」