BeAST




ケラケラ笑う俺に、ミラー越しで見える遊佐さんの目の瞬きの回数が増えた気がする。


まあ、それなりに時間が経てば、遊佐さんの緊張も解れるだろう。


学校に着いて、遊佐さんにドアを開けてもらう。

降り経てば、俺は注目の的。

そら、こんな校門前で高級車から学生が出てくればな。


顔を見知ったやつが視界に入っても、当たり前に声を掛けられることはなく、ゆっくりクラス分けの掲示まで歩く。


すげえ人だな。

去年は大遅刻だったから、楽だったんだけどな。

そんなことを思いながら順番を待っていれば、目の前の女たちが俺に気付き、何故か道を開けた。

そこからはドミノのように一本道ができた。


嘘だろ。


俺がその状況に呆気に取られていれば


「開いたぞ」


隣にスッと立つ男。


「譲ってくれてんだろ」


見りゃ分かる。けど理解出来ねえ。


「美人が静かに待ってりゃ、こうなる。」


「んな事あってたまるか」


慎矢が淡々と話す言葉に、眉間に皺を寄せる。


「どうしたんです?」


すぐにニコッと笑って前の人たちに聞けば、どうぞどうぞの合唱。


「そんな、順番ですから」


困ったように首を傾げれば、男も女も顔を赤く染める。


「行くよ」


今度は違う声。

俺の手首を掴んで前に歩き出すのは


「漸」



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