BeAST




「……仕事したくないな」



冗談交じり。

でも、息の混じったか細い声は、何かを隠している。



「そ。じゃあ、しなけりゃいい。サボれサボれ」


「あはは、悪魔の声だ」


「いいだろ1日ぐらい。お前は仕事のために生きてるんじゃねえだろ。生きるために仕事してんだろ。だったら、壊れてちゃ意味がねえ」



愛なのか、依存なのか。

そんなのは知ったこっちゃない。


依存した覚えはない。

愛した覚えもない。



けれど、消えて欲しくない。


それが答えだろ。


俺の肩にグリグリと顔をすり付ける耀介。



「…元気出た。仕事するから離して」


お前がそう言うなら、そうすればいい。

パッと手を離して、寝直す。


「ん〜、そう名残惜しさも無さげだと寂しい」


「うるせえ、甘えてえだけなら、女作ればいいだろ。俺は寝る」


ふう、とため息を着く耀介。

ベッドが微かに軋み、立ち上がるのが分かる。



「無理はすんな」


小声でそう呟けば、ふふ、とまた笑ってカーテンを閉めた。


俺は、かなりまともになった方だと思う。

あいつや、耀介の影響で。

発作のような症状も、今はほとんど出ない。


女とか男とかどうでもいい。

俺が女だとか、どうでもいい。


ただただ、俺は、今ここに俺が生きていることが不思議だ。





< 5 / 337 >

この作品をシェア

pagetop