BeAST
「ふふ、ひおは恥ずかしいって思うかもしれないけど、僕の方が恥ずかしかったよ。簡単に自分の死を受け入れて、ひおを置いていこうとした自分が」
初めて聞いた。そんなの。
「誰も信じない、誰にも甘えないひおの心、無理やり開かせたくせに、その扉を僕自身が閉じようとしてた。真っ暗だったひおの目が、日に日に明るくなっていって、帰ってくるたび、僕のところに来て甘えてくれて。心からそんなひおが愛おしかったし、嬉しかった。僕なんかの力で、ひおの未来が開けてきてるって」
ああ、ダメなのにな。
そんなの、
「ひお」
環が俺の頬を拭う。
「この気持ちに気付いてからずっと、この気持ちは閉まっておこうと思ってた。これを聞いて1番辛くなるのは、ひおだって分かってたのに」
涙が止まらない。
こんなに、俺の感情を動かせるのは環しかいない。
でも、環の感情と同じじゃないのは分かる。
同じじゃ、ない。
なんでそんなことが、こんなに辛いんだろう。
「いい。環が、我慢して隠してる方が、辛い」
俺の頬を拭っていた手を、グッと握りしめる環。
「つか、見る目ねえな。俺のどこが女の子なんだよ。」
泣いていてくぐもる声で話す。
「顔も、声も、心も、体も、全部だよ」