BeAST
やっぱ、ここ使ってんのかな。
でも、皇がサボってんのとか見たことねえしな。
「……皇」
声をかけるか迷ったけど、俺を追ってきた以上、かけなきゃいけないんだろう。
でも、起きない。
「皇、こんなとこで寝んな」
肩をポンポンと叩けば、
「ん……」
やっと目を覚まし、俺を見る。
そして、俺の目に手を伸ばすから、反射的に目を瞑れば、親指の腹でグイッと涙を拭う。
「綺麗だな」
ピクっと体が反応する。
「は?」
何言ってんだこいつ。
「そりゃ男にも告られるか」
顔から手を離さない皇。
「っ…おい、離せ」
俺が腕を掴んで払おうとしても、ビクともしない。
「寝ぼけてんのか…?ふざけんなよ」
頬にあった手が、後頭部に回される。
流石の俺も危機感ってのはある。
身を後ろに仰け反らせるが、力が……強え。
「頭、小さいな」
やば、い
待てよ
どんだけ、男の力には勝てねえって言ったって、殴られるとか暴力的なものは想定してたけど、こういうのは、ねえだろ!?
もう片方の手も伸びてきて、その手を掴む。
「お前!何考えてんだ!」
端正な顔が、いつもの様に無で。
それでいて、いつもとは何かが違うように見えて怖い。
……怖い?
俺が?
力で勝てないから、か。