BeAST
「ほら座れって。」
ポンポンと胸を押す。
されるがままにストンっと座った。
素直さが意外で、こっちが驚く。
切れた口端や、腫れた頬。
こう間近で見ると、改めて思う。
整った顔だ。
肌も綺麗なんだな。
「……お前」
ん?喋った。
「授業、サボってただろ」
……へえ?
「よく知ってんね」
皇漸(すめらぎぜん)。
同じクラスではある。
けど、クラスメイトなんざに興味は無さげなやつ。
無口、無愛想。
それが許される顔面偏差値とスタイルと学力。
加えて、金持ち。
柿谷慎矢も似たり寄ったり。
顔面偏差値高いわ、スタイルいいわ、頭いいわ、金持ちだわ。
同族嫌悪って感じだな。
まあ、こいつらの感情とか知らねえけど。
俺の" 仕事 "の対象ではあるからな。
俺は耀介からの頼まれ事で、ある条件を飲んでもらう代わりにこの学園に男として入学、柿谷慎矢と皇漸の監視役をしている。
だるい。
死ぬほど。
俺がこんな時に、喧嘩なんかするなよ。
「おし、終わったぞ。」
「え」
驚いたような顔をする皇。
「勘違いすんなよ。同じ空間に他人が居座るのがだるかっただけだ」
使ったものを除菌し、片付ける。
「同族嫌悪だかなんだか知らねえが、あんま喧嘩すんなよ」
俺はただ監視をして、卒業出来りゃそれでいい。揉め事起こされちゃたまったもんじゃねえよ。