BeAST




俺の呼び掛けに振り返る、七種礼。


七種は、大抵皆のことを苗字で呼ぶ。

だから、俺も苗字で呼んでいる。


「これからも、よろしく頼む」


「はいはい、灯織さん」


バレちまったもんは仕方ない。


バレたのが、礼で幸いだった。


昼休みも、礼は俺に付きっきりだ。


「俺、柿谷のとこ行くけど」


「へえ」


「評判、悪くなんねえ?お前の」


「実力で上がるから問題ない」


礼は、生徒会長になろうとしてる。


それなのに、暴力沙汰の絶えない、戦場そのものに立ち会うって言うのは如何なものか。


「灯織」


……あれ。


うちのクラスの和やかな雰囲気が凍る。



「あれ。自ら構ってもらいに来た?」



柿谷慎矢と、黒髪。


うちのクラスを戦場にするつもりで?


「どうだ、首の跡は。消えたか」


「あー、それどころか、増えた。」


「あ?」


首に手が伸びてくる。

それをパシ、と礼が掴む。

それに便乗して幸大も掴む。


この図、いつもなら面白いと思えるが、ちょっとこれは。


「何、友達?お前がこの前言ってた仲良しごっこか?」


ハッと鼻で笑う黒髪。


「残念ながら違うな。この2人は俺の事よーく知ってる。お前と柿谷の薄っぺらい関係性とは、比べようないくらいに」


いい、幸大、礼。

と2人に言う。


2人は手を離す。



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