BeAST





「それにしても、皇が居るのによく来ようと思ったな。成長、か?」


クスクス笑って見せれば、怒りを押し殺したような真顔を見せる。

挑発。

でも、これはかなりやばい。


皇が動かなきゃいいが、万が一動いたら……


考えろ。周りのヤツらが危険にならない方法。


再び、俺の首に手を伸ばし、アンダーシャツをグイッと下げる。


礼以外の人間が、言葉を無くす。



昨日より、変色したいくつかのキスマーク。


圧迫痕よりもそっちの方が濃いくらいだ。



「これ、漸か?」


柿谷のその言葉に、周りがザワつく。



ニヤ、と笑う柿谷。


礼、耐えてくれよ。


「面白いこと言うな、柿谷」


ケラケラと笑ってみせる。


俺が笑えば、柿谷は笑わない。

いつもの事だ。

2人で笑う時間なんて0コンマもありはしない。


「俺がお前と初めて会った時も、漸とキスしてただろ」


昨日も言ってたが、その現場までは見てなかったはずだ。


「……ああ、そういうこと」


「え、灯織…?」


犀川がまさか、という顔をする。


「俺の血を見て、そー思ったわけね。想像力豊かだわ」


「血って」


低く隣で礼が唸る。


「あー、正確には俺の血じゃなくて、皇の血なんだけど。」



ガタンッ


最悪だ。

誰かが立ち上がった音。



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