魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
「そうすれば国が割れる。僕たちは矢面に立たされ、兄弟で争うことになるんだ」

「でも、あなたたちはそれを望まないじゃない」

「ああ、そうだよ。だが、そういうものだ。僕たち自身の感情で動かせるものじゃない」

 理解したくなかったけれど、ノインがそう言うならそうなのだろう。

「だから僕は、王族の異端者でい続ける。変わり者の錬金術師でいれば、僕の存在がアベルを苦しめることにならないだろう?」

 せっかく引っ込んだ涙がまた出そうになって、ぎゅっと唇を噛みしめた。

 ノインがなぜ、王族らしからぬ生活を送っているのか、ようやくわかった。

 彼は兄のために、敢えて塔から出ない人生を選んだのだ。
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