魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
 くしゃっと髪を撫でて、ノインは振り返らずに階段を上っていった。

「なに、それ」

 ノインに撫でられた場所を手でおさえ、つぶやく。

「……ありがとう、なんて言うキャラじゃないくせに」

 彼と過ごしてきた時間が長くなったからこそ、らしくない言葉に込められたノインの深い感謝とうれしさに気づいてしまう。

 明日になったら、『この僕がありがとうなんて言うものか』とごまかされるんじゃないかな。彼はそういう人だから。

 ひねくれていても、ノインはとても兄想いで優しい。

 私が思っていたよりもずっと素敵な人だ、と思った。
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