魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
 私の歌を必要としない、きれいな音色が響く。

 ノインは私の集中力を切らさないよう、なにも言わなかった。

 こうして見られるのは初めてじゃないのに、なんだかちょっと緊張する。

「これ、すごく気持ちいい音がする。アルトの時ほどじゃないけど」

「僕にはなにも聞こえないな。同じものが聞けたらよかったのに」

 ノインのひと言がなぜか私の胸を騒がせる。

 私もノインにこの音を聞かせられたらよかった。ふたりで素敵なものを共有できたら、楽しいものがもっと楽しくなる。

 同じ音色に浸るならノインがいい。彼以外とは、この音を分かち合いたくない──。

「あ、できた」

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