魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
 親善試合に向けて、カーディフ側が用意した部屋だ。試合前にほかの出場者と会わないようになっているのか、それらしい人は見かけなかった。

窓の側で月を見上げながら、アルトとこれまでのことを振り返る。

「またこの街に戻ってくる日がくるとは思ってなかったな」

 家を出てから、最初の難関に当たったのがこの街だった。

 昨年はラスヘイム側の街で開催されたらしい。私が出る今年はここで行われるなんて、運命的なものを感じずにはいられない。

「追い出されてからいろいろあったけど、私の始まりはたぶんこの街だったと思うの。自分の甘さをたくさん痛感したしね」

 あれからもうすぐ一年が経過しようとしている。
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