魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
 その瞬間、ノインは私を素早く抱き寄せた。広い胸に顔を押しつけられて息が止まる。

「あ、ありがとう」

 咄嗟に守ろうとしてくれたのがわかって、声を震わせながらお礼を言う。

 呪文を詠唱しているノインは返事をしなかったけれど、代わりに私の背中をとんとんと優しく叩いた。

 ノインは左手で私を抱き寄せたまま、右手の先に複雑な魔法陣を生み出した。暗い紫色にぼんやりと光るそれは、宙に浮かんで彼の右腕を覆う。

 小さく呻く声が聞こえて顔を上げると、ノインの額には脂汗が浮かんでいた。苦悶の表情が痛ましくて、ますます自分の無力さを思い知らされる。

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