魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
 その頃には陽が暮れ始めて、少しだけ冷たい風が吹いていた。いつまでも泣いていられる気がしたのに、もう頬は乾いている。

「ノイン」

「なんだ」

 沈黙を破ると、待っていたようにすぐ返事があった。

「もし私がいなくなっても、覚えておいてくれる?」

 師匠のように、生きていた証をすべて奪われても。

 言外に意味を込めて尋ねる。ノインの答えは早かった。

「すぐに忘れてやる。名前も、話したことも全部」

「ひどいよ」

「だったら僕の前からいなくなるな」

 傷ついた声に聞こえてノインを見上げる。不機嫌そうな表情の代わりに、真剣な目で見つめられた。

「僕がおまえの居場所になってやる」

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