魔力ゼロの出来損ないとして追放されましたが、二度目の人生は隣国の王家お抱えチート錬金術師になりました
 涙は出し尽くしたと思っていたのに、また新しいものが頬を流れていった。

「本当?」

「嘘なんてつくか」

 どこまでも私を特別扱いしてくれる、ひねくれ者で面倒くさい錬金術師。

 変なところで優しくて、身内のために自分を犠牲にできる素敵な人。

 好きだな、と当たり前のように思った。

「ノインがいてくれてよかった。私と出会ってくれてありがとう」

「僕はおまえに出会ってから、面倒事に巻き込まれてばかりだけどな」

 長い指が私の目尻をなぞり、涙を拭う。

「まあ、それも悪くない」

 後頭部に回った手が私を軽く上向かせた。涙の跡が残る頬にノインの唇が触れて、すぐに離れていく。

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