皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「お忍びで……などというレベルで市中に出かけていらっしゃるのではないということですね」

「変装して身分を偽り、国民と交わるのも中々に楽しいぞ」

ソフィアはハアーと長いため息をついた。

物語や小説の話たと思っていた。

ソフィアはリアルに行われていることへの驚きと、身近にそんな人がいたことへの呆れで、開いた口が塞がらなかった。

「そうだ。これからはそなたにも付き合ってもらうぞ」

「はあ?」

「市中に出かける時、その成りは無しだ」

「わ、私にまた」

「そう、そのまただ」

「私は護衛であり、騎士です殿下」

「殿下は無しだ。そうだな……うーん、ルイス」

「殿下を呼び捨てになどできません」

「では……うーん……若はどうだ?」

「若? ですか」

「そう、『若』なら問題あるまい」

「承知いたしました。市中では『若』と呼ばせていただきます」
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