皇太子殿下は護衛騎士を斯く愛せり
「そなたのことは『ソフィ』で良いな」

「ソフィ……」

「何だ、不満か?」

「いえ。身内以外でそのように呼ばれたことはなかったので」

「いつも仏頂面をしているからだ」

「不自由はいたしておりませんので。そもそもヘラヘラしている護衛や騎士など、誰が信頼いたしましょうか」

「そなたは硬いな」

「それは誉め言葉でしょうか」

「はあ? 何故そうなる。そなたは護衛とか騎士である前に……」

ルイスはソフィアが自分の顔を覗きこんでいることに気づいて、言葉を飲みこんだ。

「そなたは何故、騎士になった?」

「父は私が生まれた時、たいそう悔やんだそうです。何故、男子ではないのだ? と、母をなじったと。そして、私は父に男子として育てられました」

ルイスは黙ってソフィアが話すのを聞いていた。
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